ローカルアイドルのライブは、ファンによる応援パフォーマンスが特徴的なことで知られています。最も特徴的な文化といえるのが、掛け声や踊りで応援の気持ちを表現する「コール」ではないでしょうか。札幌のアイドルのライブでも、ファンがコールで熱い気持ちをメンバーに伝えているシーンがしばしば見受けられます。コールについて知ったうえで足を運ぶと、札幌アイドルのライブをより楽しめるかもしれません。この記事では、ローカルアイドルのコールに関する基礎知識について解説します。
アイドルのライブで行われるコールとは?
「コール」とは、ローカルのアイドルのライブの最中に行われる、ファンによる応援パフォーマンスの総称です。主に、声を出すことや踊りで行われます。多くのファンで同じ掛け声を出し、同じ踊りを行うことで、一体感を持って盛り上げることが特徴です。
ローカルアイドルのカルチャーには、いくつか定番のコールがあります。また、アイドルや曲によっては、オリジナルのコールが行われる場合があります。
「MIX」、「合いの手」、「口上」など、コールの呼び方はさまざまです。これを、コールとは別のものとして区別する場合もあります。しかし、この記事では、あくまで「ファンがライブ中に応援のために行うパフォーマンスの総称」としてコールを紹介します。細かな種類については、以下で解説していきます。
あまりにも深い世界なので、一朝一夕では語れないぽろ!
アイドルのコールの種類
ローカルアイドルのコールはいくつかの種類に分けられます。地域によって異なりますが、以下のように分類するのが一般的です。
- MIX
- 合いの手
- 口上
- ヲタ芸
それぞれのコールの種類について解説します。
MIX
MIXは、曲のイントロや感想でファンが一体となって叫ぶ掛け声のことです。1990年代に生まれたといわれており、非常に複雑で長い歴史を持っています。「タイガー!ファイヤー!サイバー!ファイバー!ダイバー!バイバー!ジャージャー!」という、一聴すると何を言っているのかわからない内容でインパクトがあることから、ローカルアイドルのライブを代表する文化といえるでしょう。
これまでローカルアイドルのカルチャーのなかで、さまざまなMIXが生まれてきました。代表的なMIXとして以下のようなものが挙げられます。
- 英語MIX
- 園長MIX
- 日本語MIX
- アイヌ語MIX
北海道には伝説の人がいるんだぽろ!
合いの手
合いの手は、曲中の随所で合いの手のように入れる掛け声のようなものです。曲によっては、アイドルの歌に重ねるように入れることもあります。
「ファイボー!ワイパー!」など、MIXを引用したものが一般的ですが、アイドル・曲によってはMIXとは関係のない合いの手もあります。以下は、多くのライブで使われる汎用性の高い合いの手の例です(◯◯にはメンバーの名前が入る)。
- 「L、O、V、E!ラブリー、〇〇!」
- 「〇〇の瞳に恋してる!」
口上
口上は、主に間奏で行われるファンの応援パフォーマンスです。ほかのコールとは異なり、16小節程度にわたる文章になっていることが特徴です。スタンダードな口上である「ガチ恋口上」を紹介します(細かな内容はアイドルや現場によって異なる可能性あり)。
”言いたいことが、あるんだよ!
やっぱり◯◯はかわいいよ!
好き好き、大好き、やっぱ好き!
やっと見つけたお姫様!
俺が生まれてきた理由。
それは◯◯に出会うため!
俺と一緒に人生歩もう!
世界で一番愛してる!
ア、イ、シ、テ、ル!”
このほか、アイドルによっては固有の口上が定着しているケースがあります。覚えるまでが大変ですが、一度覚えてしまえば、他のファンと共にライブを盛り上げる一体感が味わえるでしょう。
ヲタ芸
ヲタ芸は、ファン同士による独特の動き・踊りでライブを盛り上げるパフォーマンスのことです。上記のような声によるパフォーマンスと異なり、体の動きで応援の気持ちを表現します。
ヲタ芸も長いローカルアイドルカルチャーのなかで細分化してきました。現在は、以下のような種類のヲタ芸が存在します。
- OAD
- ニーハイオーハイ
- ケチャ
- 推しジャンプ
- マワリ
- ソイヤ
- ナルシス
- タイガー
- 8の字
会場のスペースが必要になるため、周囲への配慮が求められます。近年はヲタ芸を禁止している運営も多いため、事前にアナウンスを確認しておかなければなりません。
アイドルのコール(MIX)文化は札幌から火がついた?
アイドルのコール、いわゆる「MIX」と呼ばれる掛け声文化は、実は北海道・札幌でその火がついたとされています。この文化は、現在では日本中のアイドルライブやイベントで定番となっていますが、その起源は1990年代初頭、北海道で活動していたローカルなダンスユニットやアイドルイベントに端を発します。
MIXの最初の形は、ファンがアイドルやパフォーマーに対してリズミカルに掛け声を入れるものでした。当時、北海道のローカルなアイドルファンがパフォーマンスを盛り上げるために自然発生的に始めたこの掛け声が、やがて「MIX」として定着していきます。特に札幌で行われたイベントで、この掛け声がファン同士の間で広まり、1993年から1994年にかけて、札幌のイベントでは当たり前のものとなっていました。
このMIX文化の発展には、特に「EVEL」という二人組のダンスユニットが大きく貢献しました。EVELは札幌を拠点に活動しており、彼らのライブパフォーマンスの中で、ファンが掛け声を取り入れることが広まりました。彼らは約7年から8年かけて、MIXのスタイルを磨き上げていきました。この活動が、現在のMIXの原型を作り上げ、北海道から日本全国へと伝播するきっかけとなったのです。
その後、2000年代に入り、インターネットの普及により情報が瞬く間に広がる中で、MIXは他の地域のアイドルファンにも受け入れられていきます。また、2005年に結成されたAKB48のような全国的に有名なアイドルグループの登場も、MIXが全国に広まる一助となりました。AKB48のライブでもMIXが使われるようになり、ファンによってさまざまなバリエーションが生まれ、今では全国のアイドルイベントで見られるほどの文化となっています。
MIXは、単なる掛け声以上の意味を持つ文化的現象です。ファンがアイドルのパフォーマンスに対して一体となって応援するこのスタイルは、ライブの盛り上がりを増し、観客全体が一つになる瞬間を生み出します。日本のアイドル文化におけるMIXは、もはや欠かせない存在となり、特に札幌から全国へ広がったこの文化が、アイドルとファンの間に特別な絆を築いていることは間違いありません。
現在でもMIXは日本全国のアイドルイベントで使われ続けており、新しい形で進化しながらも、当初のエネルギーと一体感を保ち続けています。この文化は、日本発の現象として、既に外国のアイドルファンにも浸透しており、今後さらに広がる可能性があります。
コールは個人の自由!するときは周りへの配慮を
コールはローカルアイドル独自の文化であり、ライブに参加するうえでの醍醐味でもあります。一方で、コールに参加するかどうかは個人の自由です。ローカルアイドルのライブに通い始めて間もなく、コールへの参加に抵抗があるのであれば、無理をする必要はありません。ファン同士のコミュニティに馴染み、どのように参加すれば良いのかわかるようになれば、少しずつコールを楽しめるはずです。
また、他の人を無理にコールに参加させないことや、コールに参加していない人に配慮することも、紳士的なファンの嗜みといえます。「コールに参加していない = ライブを楽しんでいない」ということではありません。アイドルのファンである以上、さまざまな人がライブに来ることを考慮し、全員が楽しめる場を目指しましょう。